染と織のコト
平成19年に催された大阪民藝館の現代の染織展。民芸という範囲でなく、今の美しい貴重な布が集まっていた。
肥薩線で球磨川の傍を通る。とにかく気持ちのよい。
人吉駅では轟音をひびかせていたSL
やっと着いた魚座。漆喰の白壁が美しい。
魚座にたどりつくきっかけとなった加山晴子の器。
タンザニアで出土した鳥のおきもの?単純な造形に心魅かれる。
先のAさんの応接間にとても気になる器が飾られてあった。
土物のようだが、アイボリーの地に茫洋とした文様のきれいな色が並んでいるのだ。
仕事の話が一段落してその器について伺ってみると、加山晴子さんという方の作品らしい。
Aさんが柳先生の工房にいらっしゃったときの先輩のご実家がギャラリーを営んでおられて、そのご縁で手に入れたとのこと。「ギョザ」という名前の熊本県のギャラリー??
4年前大阪民藝館で開催された展覧会「現代の染織展」のことが急に思い出された。
それは、小袖の絢爛豪華たる世界ではなく、現代に生きる我々が、人の手によってつくられ、使用される道具であるきもの、その中に確かに存在する美を問う、そんな展覧会であった。
大変興味をひかれたので3回通った。そのパンフレットに確か“コレクションは「魚座」”と書いてあったような。。。なるほど「さかなざ」ではなく「ギョザ」と読むのか。。。
Aさんにそのことを問うてみると、まさにそのコレクションはギョザ(魚座)という熊本県人吉市のギャラリー、上村正美さんのものだと教えてくれた。お姉さまが現在当主としていらしゃると伺い、こんな偶然はもったいないので、訪ねてみることにした。
熊本県の南東部、鹿児島県と宮崎県に接する人吉へは肥薩線で向かう、球磨川に沿って上流へと向かっていく列車は美しい山間をくぐり抜ける。車窓をずっと眺めていても全く退屈しない。駅を降りるとちょうど観光用の蒸気機関車が出発するところだった。音に加えて石炭を燃やす匂いがなんとも力強い。
人吉駅から10分ほどのところにその店、「魚座」はあった。
あるある!加山晴子さんの器がおもてのウインドウに並べてある。お父様の上村正美さんは数年前に亡くなられており、現当主の上村さんに「現代の染織展」の話などを伺い、染織品の展示などについて尋ねた。残念ながらそれらの染織品は展示できる状況になく、手にとることは叶わなかった。
ちょうどアフリカのお面の展覧会の片付けをされていた。そのお面と対峙して感じたが、私自身はどうも、対象物をどう見るか、見かたのつぼ、鑑賞の様式みたいなものにとらわれすぎているように感じた。お面はもう圧倒的なのだ。しかし、感じたままっていうのもなんか虚偽っぽい。時間が美しさの根っこみたいなものを、手にした人にゆっくりと伝えていく。上村さんの店はそんな空間のように思った。